「加圧トレーニングは聞いたことがあるけれど、BFRトレーニングって何?」
こうした疑問を持つ方は多いだろう。
BFRトレーニングとは、腕や脚の付け根にカフなどを巻き、動脈からの血流を部分的に制限しながら、静脈還流をより強く制限した状態で運動する方法だ[1–3]。
「加圧トレーニングとの違いは?」
結論を先に言う。
KAATSU(加圧トレーニング)は、このBFRに含まれる手法の一つと考えると分かりやすい。基本原理には共通点があるが、使用機器や圧設定、運用方法、資格制度まで同一ではない。
私はKAATSU JAPANの認定資格を取得し、約20年にわたり、現場で血流制限トレーニングを指導してきた。その立場から見ると、「どちらが正しいか」と考えるより、それぞれの違いを理解し、自分に合った方法を安全に選ぶことが重要だと考えている。
この記事では、両者の違いを歴史・圧設定・資格・安全性の観点から整理し、40代が血流制限トレーニングを始めるうえで本当に必要な情報をフラットに伝える。

加圧トレーニングとBFRの関係
BFRの起源は日本のKAATSU、現在はBFRという名称で広く研究される
BFR、血流制限トレーニングの起源は日本にある。
1966年、佐藤義昭氏が法事での正座中に感じた「足のしびれと腫れ」をヒントに、血流制限トレーニングのアイデアを着想した。その後、長年の試行錯誤を経て「加圧トレーニング」として体系化し、1993年に特許出願、1997年に登録された。2000年代後半には国内でのブームが最盛期を迎え、KAATSU JAPANが商標・資格制度を整備し、指導者の育成を進めていった。
KAATSUとして日本で始まった血流制限を利用するトレーニングは、その後海外でも研究が進み、現在ではBlood Flow Restriction(BFR)という一般的な学術用語で広く扱われている。低負荷でも筋肥大・筋力向上が得られることはメタ分析でも示されており[1]、リハビリテーションや競技スポーツの分野でも多数の研究が報告されている[2]。
血流制限トレーニングは、高重量を扱いにくい人でも、比較的軽い負荷で筋力や筋肥大への刺激を得られるため[1]、40代以降の体づくりでも選択肢になり得る。
KAATSUとBFR比較
| 比較項目 | KAATSU | BFR |
|---|---|---|
| 使用機器 | KAATSU専用機器・ベルト | 空気圧式カフなど複数の方式 |
| 圧設定 | KAATSU独自の方法 | AOP/LOPを基準とした個別設定が広く推奨 |
| 運用 | KAATSUの体系に基づく | 研究・医療・スポーツなどで多様 |
| 資格 | KAATSUの認定制度 | 団体・教育プログラムが複数存在 |
資格について
国内では「加圧インストラクター(KAATSU JAPAN認定)」「BFRトレーナーズ協会」など複数の資格が存在し、海外でも「Owens Recovery Science(医療職向け)」「BFRPros」など異なる団体が認定を出している。
どの資格が「正しい」という話ではない。受ける側にとってはるかに重要なのは、資格の種類よりも「圧設定を安全に行える知識と経験があるか」だ。
資格は入口に過ぎない。私自身も取得後の現場経験の方がはるかに長く、そこで学んだことの方が多い。
圧設定の違い
なぜ研究によって数値がバラバラなのか
血流制限トレーニングの論文を読むと、使用圧が研究によって大きく異なることに気づく。これは矛盾ではなく、圧の設定方式が研究ごとに異なるからだ[3][4]。
主な圧設定の方式は3つある。
① KAATSU式(個人最適圧)
KAATSUサイクル(加減圧を繰り返す独自手順)で、その人の「個人最適圧」を探り当てる方式。圧の絶対値よりも「その人にとっての適圧」を重視する考え方だ。
② AOP/LOPを基準にする方式
ドップラー超音波などで、四肢の動脈血流が完全に止まる圧を測定し、その40〜80%を使用圧とする[3]。この圧は動脈閉塞圧(AOP:arterial occlusion pressure)と呼ばれ、文献によってはLOP(limb occlusion pressure)とも表記される。個人差を反映できるため、現在の国際的な研究で広く推奨されている。
③ 固定圧方式
全員に同じ圧を用いる方式。研究条件をそろえる目的で論文では使われてきたが、個人差を考慮しないため、臨床現場では推奨されにくい[3][4]。
「40代だから圧を変える」のではなく、個人に合わせる
40代という年齢だけで、使用圧を一律に低く設定する根拠は十分ではない。必要な圧は四肢の太さ、血圧、カフの幅などに左右されるため[3]、年齢よりも、その人の血圧、四肢周径、カフの幅、既往歴、運動経験などを踏まえて個別に設定することが重要だ。
一般的な目安は40〜80% AOPだが、高ければ高いほど効果が高いわけではない。
AOPを基準にした数値設定に加えて、運動中の痛みやしびれ、強い不快感など身体の反応も確認しながら調整することが重要だ。
まとめ
KAATSU(加圧トレーニング)は、日本で生まれた血流制限トレーニングの手法であり、現在はBFRという広い名称で研究・実践が進んでいる。
基本原理は共通するが、使用機器や圧設定、運用方法には違いがある。
重要なのは「加圧かBFRか」という名前ではなく、その人に合った圧を設定し、安全に継続できる方法を選ぶことだ。
40代だから特別に圧を下げるのではなく、血圧や四肢の太さ、既往歴、運動経験などを踏まえて個別に調整していきたい。
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