BFRトレーニングは左右で強さを変えていい?40代が知っておきたい考え方
はじめに
BFR(血流制限)トレーニングを始めると、かなりの割合でぶつかる疑問がある。
「左右で締めた感覚が違うんだけど、これって問題ある?」
自分がクライアントに指導しているとき、あるいは自分自身がトレーニングしているとき、この感覚のズレは頻繁に起きる。特に40代以降の方に多い。
結論から言うと、左右で強さが多少違っても問題ない。ただし、「問題ない」と断言できるのには理由がある。その理由を理解しておかないと、調整の方向を間違える。この記事では、左右差が生まれる仕組みと、40代に特有の注意点、そして実際の調整方法を順番に解説する。
なぜ左右で感覚が違うのか
人間の体は、見た目が対称でも、内部構造は左右で異なる。
まず筋肉量の差がある。利き腕・利き脚は日常生活や運動習慣の中で繰り返し使われるため、反対側よりも断面積が大きくなっていることが多い。筋肉が太い側は同じ幅のベルトを巻いても接触面積が広くなるので、体感的に「きつい」と感じやすい。
次に血管の走行にも個人差がある。上腕動脈や大腿動脈の位置は教科書通りではなく、表層寄りか深部寄りかで締め付けに対する感受性が変わる。同じ圧でも、血管が浅い側は制限がかかりやすい。
さらに、皮下脂肪の厚みも左右差に影響する。脂肪が厚い側は圧が分散されやすく、実際の制限圧が弱くなる場合がある。
これらは全部、「体の左右が完全に対称でない」という当たり前の事実から来ている。BFRベルトは体の個別の構造に合わせて巻くものなので、数値(何cm、何目盛り)を揃えるより、それぞれの側で適切な制限がかかっているかどうかを確認することが重要になる。
40代に左右差が出やすい3つの理由
40代以降になると、左右の非対称性がより顕著になってくる。これには理由がある。
1. 過去のケガや偏った使い方の蓄積
20〜30代の間に積み重なった肩の違和感、膝の痛み、腰の問題は、知らないうちに体の使い方を変えている。右膝を痛めた人は左脚で踏ん張る癖がつき、左脚の筋肉量が右より多くなっていることがある。この場合、左側のベルトが「きつく感じる」のは、筋肉が太いことへの自然な反応だ。
2. 筋力の回復速度が左右で変わってくる
40代以降は筋肉の回復速度が落ちてくると同時に、使い方の癖による筋力差が固定されやすい。若い頃は少し鍛えれば左右が揃ってきたものが、40代では差が縮まりにくくなる。
3. 姿勢の崩れによる体幹の非対称性
長時間のデスクワーク、スマートフォンの操作、育児や介護での抱え動作など、40代は姿勢が崩れる要因が多い。骨盤や肩甲骨の位置が左右で変わると、腕や脚の付け根の形状も変わり、ベルトの当たり方に差が出る。
自分自身のクライアントを見ていると、特にデスクワーク系の方は右利きが多い影響で右肩が前に出ており、右腕の付け根の形が変わってベルトのフィット感が左と大きく違うことがある。
片側で荷物を持つ習慣や、過去のスポーツ歴による筋力差も原因になる。
特に初めてBFRを行う時に左右差を感じる方が多いが、数回こなすうちに自分なりの感覚が掴めてくる。
「左右で強さを変えていい」の正確な意味
「強さを変えていい」というのは、ベルトの締め具合の数値を左右で変えることを許可しているのではない。それぞれの側で”適切な状態”に合わせることを意味する。
適切な状態の目安は以下の通りだ。
- 両側ともベルトを巻いたまま普通に動ける(しびれや激しい痛みがない)
- セットを進めると両側に同じようなパンプ感・張りを感じる
- セット後にベルトを外して、症状が速やかに消える
この3つが揃っていれば、ベルトの締め目盛りが左右で違っていても問題はない。
逆に、これが揃っていない場合は調整が必要だ。
特に注意が必要なのは「片側だけ強い痛みやしびれが出る」「片側だけパンプが全く来ない」という状態。前者は締めすぎ、後者は緩すぎのサインだ。
実際の調整方法
調整の基本的な流れは以下になる。
ステップ1:まず「感覚がいい方」を基準にする
左右どちらか、感覚的に「これくらいでいい」と思える側を先に決める。その感覚(パンプが来る、動けるが制限感がある)を反対側でも再現するようにベルトを調整する。
ステップ2:目盛りではなく「感覚」で合わせる
ベルトの目盛りは参考程度に使う。重要なのは「両側で同じようなトレーニング感が得られているか」だ。目盛りが左右で1〜2段違っていても、感覚が揃っていれば問題ない。
ステップ3:最初の1〜2セットは確認しながら進める
調整後の最初のセットは、ハーフで様子を見る。両側のパンプ感・疲労感が近ければそのまま続ける。差があれば次のセット前に微調整する。
ステップ4:左右差は徐々に縮まることを前提にする
体が慣れてくると、左右の感受性の差は縮まってくることが多い。最初は「かなり違う」と感じていても、4〜8週間継続すると揃ってくるケースがほとんどだ。差が縮まらない場合は、左右の筋力差そのものに原因があることが多いので、通常のトレーニングで左右のバランスを整えることを検討する。
やってはいけないこと
「揃えよう」として強い方をさらに強くしない
左がきつく感じるからといって、右を左に合わせて強く巻き直すのは逆効果だ。40代以降は血管や神経への影響が出やすいため、強すぎる締め付けは避ける。感覚が強い側を「正」として強い側に揃えるのではなく、あくまで「適切な制限がかかっている状態」を左右それぞれで作ることが目的だ。
ベルトを外さずに長時間放置しない
左右の調整を繰り返しているうちにセット間のインターバルが長くなりがちだが、ベルトを巻いたまま5分以上放置するのは避ける。標準的なインターバルは30〜60秒だ。
痛みを我慢してトレーニングを続けない
片側に強い痛みやしびれが出た場合は、その側のベルトをすぐに外す。「もう少し続ければ慣れる」という判断は禁物で、特に40代以降はリスクが高い。
まとめ
BFRトレーニングで左右の締め具合が違うのは、体の構造が左右対称でないことへの自然な対応だ。数値を揃えることより、それぞれの側で適切な制限がかかっているかを確認することの方がずっと重要になる。
40代以降は過去のケガや姿勢の崩れ、使い方の癖が左右差に直結しやすい。焦って揃えようとするより、体の反応を見ながら丁寧に調整する方が安全だし、結果も出やすい。
最初は「かなり違う」と感じても、続けていくうちに左右の感覚は近づいてくる。不安な場合は、BFRトレーニングの資格を持つトレーナーに相談しながら調整することを勧める。
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