加圧トレーニングとBFRトレーニングの違いを正直に解説|20年現場をやってきた私の結論

① BFRトレーニング基礎

― KAATSU資格保有トレーナーが、それでもフラットに語る ―

「加圧トレーニング」と「BFRトレーニング」、調べると両方出てくる。

どちらが正しいのか、どちらが効果的なのか——混乱する方が多いのは当然だ。名前が違えば別物に見える。

結論を先に言う。

原理は同じだ。名前が違うだけで、やっていることは「血流を制限して、軽い負荷でも筋肉に強い刺激を与える」という一点において変わらない。

私はKAATSU JAPAN認定資格を持ち、現場で血流制限トレーニングを扱って約20年になる。最初は法人で資格を取り、その後も現場で使い続けてきた。

その立場から正直に言うと、「加圧JAPAN vs BFR、他団体」という対立の構図自体が、この分野を分かりにくくしている大きな原因の一つだと思っている。

この記事では、各メソッドの違いを歴史・圧設定・資格・安全性の観点から整理し、40代が血流制限トレーニングを始めるうえで本当に必要な情報をフラットに伝える。


そもそも「加圧」と「BFR」はなぜ別の名前があるのか

KAATSUが元祖、BFRは国際展開の過程で生まれた呼称

血流制限トレーニングの起源は日本にある。

1966年、佐藤義昭氏が法事での正座中に感じた「足のしびれと腫れ」をヒントに血流制限トレーニングのアイデアを着想した。その後、長年の試行錯誤を経て「加圧トレーニング」として体系化し、1993年に特許出願、1997年に登録された。2000年代後半には国内でのブームが最盛期を迎え、KAATSU JAPANが商標・資格制度を整備し、指導者の育成を進めていった。

一方、この手法は海外でも研究者の関心を集め、「Blood Flow Restriction(BFR)」という学術的な呼称で国際展開していった。現在ではPubMedに掲載される関連論文は数百本を超え、リハビリや競技スポーツの分野でも広く研究されている。

つまり「加圧」と「BFR」は、同じ原理を持つ手法が日本と海外でそれぞれ独自に発展した結果、名前が分かれたものだ。

商標・特許をめぐる動きと、現場が感じた変化

KAATSUは一時期、商標や特許をめぐって国内外での法的な争いもあった。

その頃、プロモーションの規模も大きく、「加圧トレーニング」という言葉は国内でかなり広まった。私自身も当時の盛り上がりを現場で感じていた。

ただ、正直に言うと——その後、現場での話題としての熱量は落ち着いていった印象がある。普及活動がビジネス的な色合いを帯びたこともあり、「血流制限トレーニングそのものの良さ」が伝わりきらないまま、興味が薄れていった方も多かったのではないかと思っている。

それが今も少し惜しいと感じている。

血流制限トレーニングは、40代以降の体づくりにとって本当に理にかなった方法だ。関節への負担が少なく、軽い負荷で筋肉への刺激を確保できる。このブログを始めたのも、その良さを改めてフラットに伝えたいという動機が一番大きい。


「加圧」と「BFR」の実際の違い

名前の由来は分かった。では実際の違いは何か。

比較表にまとめる。

比較項目加圧トレーニング(KAATSU)BFRトレーニング(国際標準)
発祥日本(1970年代)欧米中心に研究・普及
正式な位置づけ商標あり・主要特許は期限切れ/管理された資格制度学術的呼称/資格は複数団体が独立して発行
圧の設定方式KAATSUサイクルによる個人最適圧(IOP)LOP(動脈閉塞圧)の40〜80%を基準
使用機器専用加圧ベルト(圧力センサー付き)空気圧カフ・汎用バンドなど多様
主な研究の場国内研究が中心(Int J KAATSU Training Res等)国際医学誌(PubMed掲載多数)
コスト感機器・資格ともに高コスト汎用バンドなら比較的低コスト
自宅実施専門家推奨(一人でのIOP設定が難しい)バンドと知識があれば可能だが要注意
適した場面施設での指導・精密な圧管理が必要な場合研究ベースの指導・コスト重視の場合

資格については正直に言う

国内では「加圧インストラクター(KAATSU JAPAN認定)」「BFRトレーナーズ協会」など複数の資格が存在し、海外でも「Owens Recovery Science(医療職向け)」「BFRPros」など異なる団体が認定を出している。

どの資格が「正しい」という話ではなく、資格よりも「圧設定を安全に行える知識と経験があるか」の方が、受ける側にとってはるかに重要だ。

資格は入口に過ぎない。私自身も取得後の現場経験の方がはるかに長く、そこで学んだことの方が多い。


圧設定の話——ここが一番大事で、一番ばらつきがある

なぜ研究によって数値がバラバラなのか

血流制限トレーニングの論文を読むと、使用圧が「80〜230mmHg」と研究によって大きく異なることに気づく。これは矛盾ではなく、設定方式が研究ごとに異なるからだ。

主な圧設定の方式は3つある。

① KAATSU式(個人最適圧・IOP方式) KAATSUサイクル(加減圧を繰り返す独自手順)で、その人の「個人最適圧」を探り当てる方式。圧の絶対値よりも「その人にとっての適圧」を重視する考え方。

② LOP%方式(国際スタンダード) 超音波などで動脈を完全に閉塞する圧(LOP)を測定し、その40〜80%を使用圧とする。上肢は40〜50%、下肢は60〜80%が目安とされている。個人差を反映した、現在の国際研究で最も支持されている方法。

③ 固定圧方式 「150〜200mmHg固定」など、研究の統一性を保つために使われる。臨床現場では個人差を無視するため推奨されないが、論文では多く使われる。

40代に合う圧の目安

40代以降は、20〜30代と比べて血管の弾力性が低下し、同じ圧でも体への影響が出やすくなる

そのため、40代への圧設定で私が意識していることは以下だ。

  • 上肢:LOP比40〜50%程度から始める(絶対値で言えば60〜100mmHg前後が目安になることが多いが、個人差が大きい)
  • 下肢:LOP比60〜70%程度を上限の目安にする(太ももの場合、120〜160mmHg前後が多いが、あくまで個人差次第)
  • 初回は必ず低圧から:「強い方が効く」という感覚は完全に間違いで、適切な圧の下限で十分な効果が出る
  • 痺れ・痛み・皮膚の色変化は即中止:これらは圧が強すぎるサインで、我慢するものではない

数値はあくまで目安だ。身体の反応を見ながら調整することが、特に40代では不可欠になる。


自宅・独学でのBFRについて正直に伝える

「バンドを買えば自宅でできる」という情報は増えている。

間違いではないが、一つだけ強くお願いしたいことがある。最初の圧設定だけは、専門家に見てもらってほしい。

血流制限のリスクは「強すぎる圧」から来る。

  • 静脈血栓のリスク
  • 神経障害
  • 皮下出血・しびれ

これらは「なんとなく強めに巻いてみた」という状況で起きやすい。慣れていない人ほど、効いている感覚を求めて圧を上げてしまう傾向がある。

一方で、正しい圧設定を体で覚えてしまえば、自宅でのセルフBFRは十分に現実的な選択肢だ。

最初の1〜2回を専門家と一緒に行い、「自分の適正圧の感覚」をつかむことを勧める。


まとめ:加圧でもBFRでも、本質は一つ

  • 加圧とBFRは名前が違うだけで、原理は同じ「血流制限トレーニング」
  • 違いは圧の設定方式・使用機器・資格制度の成り立ち
  • 「どちらが優れているか」より「圧を安全に設定できるか」が本質
  • 40代は血管の変化があるため、圧設定の慎重さが特に重要
  • 資格よりも、現場経験と安全管理への誠実さで選ぶべき
  • 自宅BFRは可能だが、最初の設定だけは専門家と確認する

血流制限トレーニングは、正しく使えば40代以降の体づくりに本当に有効なメソッドだ。プロモーションの盛衰とは関係なく、その原理と効果は変わらない。

名前や資格に惑わされず、「自分の体に合った圧で、継続できる形で」——それがこのトレーニングを活かす最短の道だと、20年の現場から感じている。


参考文献

  • Loenneke JP, et al. (2012). Low intensity blood flow restriction training: a meta-analysis. European Journal of Applied Physiology, 112(5), 1849–1859.
  • Hughes L, et al. (2017). Blood flow restriction training in clinical musculoskeletal rehabilitation. British Journal of Sports Medicine, 51(13), 1003–1011.
  • Patterson SD, et al. (2019). Blood Flow Restriction Exercise: Considerations of Methodology, Application, and Safety. Frontiers in Physiology, 10, 533.
  • Scott BR, et al. (2015). Exercise with Blood Flow Restriction: An Updated Evidence-Based Approach for Enhanced Muscular Development. Sports Medicine, 45(3), 313–325.

著者:BFRトレーナー(KAATSU JAPAN認定・NSCA-CPT・CSCS保有)|血流制限トレーニング指導歴約20年


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