BFRトレーニングはなぜ「30-15-15-15」の4セットで行われるのか

① BFRトレーニング基礎

BFRトレーニングの解説を読むと、多くの場合「30-15-15-15」という回数の並びが登場する。1セット目に30回、残りの3セットを15回ずつ。合計75回を4セットでおこなう構成だ。

なぜ、この数字なのか。なぜ3セットでも5セットでもなく、なぜ均等に「15回×4」でもないのか。

先に結論を書く。「30-15-15-15」は、他の構成より優れていることが証明された最適解ではない。 BFR研究で最も多く使われてきた標準的な回数設定であり、「これだけの量をおこなえば、多くの人に適応が起きるだろう」という目安として整理されたものだ。

ここを曖昧にしたまま「この数字が正解だ」と書く解説は少なくない。本記事では、この数字がどこから来て、なぜこの形なのか、そしてどこまでが分かっていてどこからが慣習なのかを、正直に整理していく。

「30-15-15-15」とは何か

まず定義を確認する。BFRの標準プロトコルは、次の要素で構成される。

項目内容
総回数75回
セット構成30回 → 15回 → 15回 → 15回(4セット)
負荷20〜40%1RM(軽い重量)
セット間の休息30〜60秒(短い)
バンドセット間も圧を維持する連続式が一般的。間欠式が用いられる場合もある

この「軽い負荷・短い休息・バンドを外さない」という3点が、通常のトレーニングとの決定的な違いになる。

この数字はどこから来たのか

75回・4セットという設定は、BFR研究の蓄積の中で自然に定着してきたものだ。血流制限トレーニングは日本の加圧トレーニングを起源として世界に広がったが、初期の研究群(Yasudaらの一連の研究など)がこの回数設定を採用し、その後の多くの研究が踏襲してきた。

2019年にPattersonらが発表した、BFRの方法論・応用・安全性に関する総説では、この点が明確に整理されている。そこでは、BFR研究において「30回+15回×3の計75回を4セット」という設定が、頻繁に用いられる共通の枠組みとして紹介されている。そのうえで、75回・4セットは多くの人に適応をもたらすのに十分な量だと考えられる、と述べられている。

重要なのは表現の仕方だ。「最も効果が高い」ではなく、「多くの人に適応をもたらすのに十分な量」とされている。

ただし、「十分」という言葉は、75回が効果を得るための最低回数であることを意味しない。75回より少ない回数でも効果が得られる可能性はあり、反対に75回が最適値だと証明されているわけでもない。現時点では、研究と現場で広く使用されてきた、実用的な標準量と捉えるのが適切だ。

なぜ「30回→15・15・15」の形なのか

では、なぜ均等な回数ではなく、1セット目だけ30回と多いのか。ここには機序の観点からの説明がある。

BFRでは、血流が制限された状態で運動することにより、筋内の酸素利用が制限され、通常の低負荷トレーニングよりも疲労や代謝ストレスが高まりやすい。こうした変化が、筋線維の動員や筋肥大に関係する反応を促す可能性が考えられている。

ただし、BFRが筋力や筋量の適応をもたらす仕組みは、代謝物の蓄積だけで説明できるものではなく、現在もすべてが解明されているわけではない。この代謝ストレスを効率よく高めるには、序盤でまとまった回数をこなし、早い段階で筋内環境を追い込んでおくことが理にかなう。

1セット目に30回という多めの回数を置くのは、この「環境づくり」を前倒しする意味合いが大きい。序盤で代謝物を溜め込み、その状態を維持したまま15回×3セットを重ねていく。これが「30-15-15-15」という非対称な構成の背景にある考え方だ。

セット間の休息は30〜60秒と短く設定されることが多く、研究では休息中も圧を維持する連続式が一般的に用いられている。短い休息と圧の維持によって、セット間の回復を限定し、筋内の疲労や代謝ストレスを保ちやすくするためだ。

ただし、セット間に圧を解除する間欠式でもBFR運動は実施できる。間欠式では、連続式よりも腫脹や代謝ストレスが小さくなる可能性があるため、目的や対象者に応じて使い分ける必要がある。

なぜ「もっと多く」ではないのか

「たくさんやるほど効くのでは」と考えたくなるが、BFRに関してはそうとは限らない。

一部の研究では、標準的な運動量をさらに増やしても、筋力や筋量の適応が明確に上乗せされなかったことが報告されている。ただし、BFRにおける運動量と効果の用量反応関係は、まだ十分には明らかになっていない。

現時点では「75回を超えれば無意味」と考えるのではなく、「回数を増やせば必ず効果が高まるわけではない」と理解するのが適切だ。

「30-15-15-15」が上限ではなく下限寄りの目安である、という先ほどの整理は、この点とも整合する。少なすぎず、かといって過剰でもない。実務的に扱いやすい落としどころとして、この量が定着してきたと考えるのが妥当だ。

「固定75回」と「限界まで」の関係

もうひとつ整理しておきたいことがある。BFRには、大きく2つの回数の決め方がある。

ひとつは、ここまで述べてきた「30-15-15-15の固定75回」方式。もうひとつは、各セットを反復できなくなるまで(限界まで)おこない、それを3〜5セット繰り返す方式だ。

Pattersonらは、限界までおこなうことも適応を引き出す方法のひとつだが、必ずしも必要ではないとしている。特に術後リハビリなど、追い込むことが適さない場面では、固定回数方式のほうが扱いやすい。

近年では、この2方式を直接比較する研究も進んでいる。2025年には、4セットを限界まで行う方式と固定75回方式の「総反復回数」を比較したメタ分析が報告された。4セットを限界まで行った場合の合計は平均73.1回であり、固定式の75回と近い値だった。一方で、各セットの回数配分は固定式と異なり、後半のセットほど15回を下回っていた。

この結果は、2つの方式が合計運動量の面では近くなる可能性を示している。ただし、このメタ分析は筋肥大や筋力向上の効果を直接比較したものではない。そのため、「運動量が近いから同じ適応が起きる」とまでは結論づけられない。

どこまでが分かっていて、どこからが慣習か

ここまでを踏まえて、正直に線を引いておく。

分かっていること

  • 75回・4セットは、多くの人に適応をもたらすのに十分な量として報告されている
  • 序盤に多めの回数を置き、短い休息で環境を維持する構成には、代謝ストレスの観点から合理性がある
  • 量を増やしても、効果が必ず上乗せされるとは限らない(用量反応関係は未解明)

まだ明確でないこと

  • 「30-15-15-15」という並びそのものが、他の妥当な構成(例:均等な回数配分や、限界まで方式)より優れていることを直接示した比較研究は、私が確認した範囲では限られる
  • なぜBFRが効くのかという機序自体、すべてが解明されているわけではない

つまり「30-15-15-15」は、確かな観察と機序上の合理性に支えられた、よくできた慣習と捉えるのが正確だ。「この数字でなければならない」という強い根拠があるわけではない。この違いを理解しておくと、数字に振り回されずにBFRを扱えるようになる。

現場での扱い方

以上を踏まえ、実際の指導では次のように考えている。

一般の方、特に40代以降の初心者には、まず「30-15-15-15」を基準として案内する。固定回数方式は、限界まで追い込む方式よりも運動量を管理しやすく、過度な疲労やフォームの崩れを避けやすいためだ。

一方で、これを絶対のルールとして扱う必要はない。体調やその日の状態によって、2セット目以降の15回に届かないこともある。その場合は無理をせず、できるところで止めてよい。目安はあくまで目安であり、目的は「軽い負荷で十分な刺激を入れる」ことであって、「75回という数字を達成する」ことではない。

なお、通常の中〜高負荷のトレーニングでは、そもそもこれだけの回数を重ねる必要はない。負荷が十分にあれば、少ない回数でも筋肉に強い刺激が入るためだ。BFRで回数を多く設定するのは、負荷が軽いぶんを回数と代謝ストレスで補うという、この手法ならではの事情による。回数設定は、負荷やトレーニングの目的とセットで考えるべきものだ。

まとめ

「30-15-15-15」は、BFR研究の蓄積の中で定着した、合理性のある標準プロトコルだ。ただし、それは「証明された唯一の正解」ではなく、「多くの人に十分な効果をもたらす、扱いやすい目安」である。

  • 総回数75回・4セット・軽い負荷・短い休息が基本
  • 序盤に回数を多く置くのは、代謝ストレスを前倒しするため
  • 標準量を超えて回数を増やしても、効果が上乗せされるとは限らない
  • 限界まで方式でも効果は得られ、固定75回が唯一の方法ではない

数字の背景にある考え方を理解しておけば、体調や目的に応じて柔軟に調整できる。BFRを長く安全に続けるうえで、この「なぜこの数字なのか」という視点は役に立つはずだ。


※本記事は一般的な情報提供を目的としたものである。持病や運動制限がある方は、開始前に必ず医師または専門家へ相談してほしい。


参考文献

  • Patterson SD, Hughes L, Warmington S, et al. Blood flow restriction exercise: considerations of methodology, application, and safety. Front Physiol. 2019;10:533.
  • Loenneke JP, Wilson JM, Marín PJ, et al. Low intensity blood flow restriction training: a meta-analysis. Eur J Appl Physiol. 2012;112(5):1849-1859.
  • Rolnick N, de Queiros VS, Hill EC, et al. Does Protocol Matter for Repetition Volume? A Meta-Analytic Investigation of Volitional Failure Versus the Traditionally Used 75-Repetition Blood Flow Restriction Resistance Training. Sports Med Open. 2025;11(1):84.

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