トレーニングの話をしていると「1RM」という言葉が出てくることがある。聞き慣れない方も多いと思うが、BFRトレーニングの負荷設定を理解するうえで知っておくと役立つ概念だ。難しい話ではないので、順番に説明していく。
1RMとは
1RMとは「1 Repetition Maximum」の略で、ある種目において1回だけ辛うじて持ち上げられる最大重量のことを指す。日本語では「最大挙上重量」とも呼ばれる。たとえばダンベルカールで10kgを1回ギリギリ上げられるなら、そのダンベルカールの1RMは10kgということになる。筋力トレーニングでは、この1RMを基準にして「何%の重さで何回行うか」というプログラムを組むことが多い。
一般的な測定方法
1RMの測定方法にはいくつかのアプローチがある。世界的に広く使われている代表的な方法を紹介する。
ひとつ目は直接測定法だ。ウォームアップを十分に行った後、重量を少しずつ増やしながら実際に1回だけ持ち上げられる限界の重量を探っていく。
具体的な手順としては、まず予想最大重量の50〜60%で8〜10回のウォームアップを行い、次に70〜80%で3〜5回、85〜90%で1〜2回と段階的に重量を上げていく。そして本番として90〜95%で1回を試み、成功すれば2〜5%ずつ重量を増やしながら限界を探る。
試技と試技の間には3〜5分の休憩を取るのが基本だ。
この方法はNSCAなどの専門機関でも取り上げられる標準的なプロトコルで、競技アスリートや研究現場でも広く採用されている。
ただしこの直接測定法は最大重量に挑戦するため、関節や筋肉への負担が大きく、測定する際には必ず補助者が2名必要になる。特に40代以降の方やトレーニング経験が浅い方には怪我のリスクがあるため、次に紹介する推定式を使う方が現実的だ。
推定式と回数・割合・トレーニング効果の目安
複数回できる重量から1RMを推定する方法がある。こちらも、NSCAをはじめとする専門機関でも認められているアプローチで、実際の指導現場でも広く使われている。考え方はシンプルで、「何回できる重量か」によって1RMに対する割合とトレーニング効果の特性がおおよそ決まっている。
| 反復回数 | 1RMに対する割合 | 主なトレーニング効果 |
|---|---|---|
| 1回 | 100% | 最大筋力 |
| 2回 | 95% | 最大筋力 |
| 3回 | 90% | 筋力・パワー |
| 4回 | 88% | 筋力・パワー |
| 5回 | 85% | 筋力・パワー |
| 6回 | 83% | 筋力・筋肥大 |
| 7回 | 80% | 筋力・筋肥大 |
| 8回 | 78% | 筋肥大 |
| 10回 | 75% | 筋肥大 |
| 12回 | 70% | 筋肥大・筋持久力 |
| 15回 | 65% | 筋持久力 |
| 20回以上 | 60%以下 | 筋持久力・BFR域 |
たとえばダンベルカールで8kgを10回ギリギリ上げられるなら、8kg÷0.75=約10.7kgが推定1RMとなる。この方法であれば最大重量に挑戦する必要がなく、安全に1RMの目安を把握できる。
推定値はあくまで目安。重さに慣れるプロセスも必要
ただし、推定式で出た数値はあくまで目安であることを覚えておいてほしい。実際に重量を扱う能力は、筋肉の大きさだけでなく神経系の働きにも大きく左右される。同じ筋肉量でも、その重量を扱い慣れているかどうかで発揮できる力は変わってくる。これを神経系の適応と呼ぶ。
推定1RMに挑戦したい場合は、上の表を参考にしながら少しずつ重量と回数を1RMに近づけていくのが基本だ。段階的に慣らしていった先で、一度実際に測定してみるのもいいだろう。一方、通常のトレーニングを目的としている場合は、表のプロトコルをそのまま継続して問題ない。
BFRトレーニングへの応用と実践パターン
BFRトレーニングで推奨される負荷は、研究ベースでは1RMの20〜40%程度とされている。上の表で言えば20回以上余裕を持って反復できる重量のイメージだ。
この「軽い負荷でも効果が出る」という点は、複数の研究で支持されている。1RMの20〜30%という低負荷でのBFRトレーニングが、70〜85%1RMの高負荷トレーニングに匹敵する筋肥大と筋力増加をもたらすことが示されており、高齢者を対象としたシステマティックレビューでも筋力・筋肉量の両方で有意な改善が確認されている。また20〜40%1RMでのBFRトレーニングは安全かつ効果的な手段として、筋形態と筋力の向上に寄与することが整形外科リハビリ領域でも報告されている。 nihPubMed Central
先ほどの例で言うと推定1RMが約11kgであれば、BFRでの使用重量は2〜4kg程度になる。「そんなに軽くていいの?」と感じるかもしれないが、血流を制限した状態ではこの軽さでも筋肉に十分な刺激が入る。
実際の現場では、1RMとBFRを組み合わせる方法はいくつかある。
1つ目は、通常トレーニングで先に1RMを把握してからBFRに移行するパターンだ。まず通常のトレーニングで推定1RMを出し、その20〜40%をBFRの使用重量として設定する。負荷の根拠が明確になるため、プログラムを組みやすい。
2つ目は、BFRのプロトコルそのものから1RMを逆算するパターンだ。30回・15回・15回のセットを通じて、最後のセットまでギリギリ完遂できた重量を記録する。1セット目は比較的楽に感じるよう設計されており、セットを重ねるごとにきつくなるのがこのプロトコルの特徴だ。最終セットで「あと1〜2回が限界」と感じる重量が、おおよそ1RMの65%前後に相当する。そこから逆算すると推定1RMを把握できる。通常トレーニングの経験がない方や、安全を優先したい方に向いている方法だ。
3つ目は通常トレーニングとBFRを同時並行するパターンだ。通常トレーニングで筋力と1RMを伸ばしながら、BFRで追い込みや回復促進を補完的に使う。トレーニング経験がある程度ある方に向いており、両方の効果を引き出しやすい構成だ。
どのパターンが合うかは目的や経験によって異なる。迷ったときはまずBFRのプロトコルから始めて感覚をつかむのが、40代には最も入りやすいアプローチだと考えている。
まとめ
1RMはBFRトレーニングの負荷設定を理解するうえで知っておきたい基本的な指標だ。正確に測定できなくても、推定式やプロトコルの感覚から十分に把握できる。大切なのは数字に縛られすぎず、自分の体の反応を基準に少しずつ調整していくことだ。
BFRトレーニングは正しい負荷設定と安全な巻き方があってはじめて効果が出る。まだ道具の準備が済んでいない方は、ぜひ以下の記事も参考にしてほしい。
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参考文献
Hughes L, et al. (2019). Low-Load Resistance Training With Blood Flow Restriction Improves Clinical Outcomes in Musculoskeletal Rehabilitation. Frontiers in Physiology. PMC6139300
Ritzmann R, et al. (2018). Effects of Blood Flow Restriction Training on Muscular Strength and Hypertrophy in Older Individuals. Sports Medicine. PMC6349784


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